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内容紹介
日本で「失われた30年」と呼ばれる長期停滞が続き、いまや「失われた35年」「失われた40年」と呼ばれる状況が現実味を帯びてきた。少子高齢化、経済成長の停滞、貧富の格差拡大、若者の希望の喪失——課題は山積しているが、日本社会は一向に変われない。
なぜ日本は変われないのか。
本書はその最大の原因が「メディア」にあると喝破する。
既得権益、国民性、政治システム——様々な説明が試みられてきたが、最も根本的な要因であるメディアの問題は、意外なほど議論されてこなかった。理由は単純で、メディア自身がそれを報じないからである。
本書は、メディアの外側で20年以上にわたり独立系ジャーナリズムを実践してきた著者が、日本のメディアが抱える構造的病理を総合的に解明する。本書の核心的主張は以下の通りである:
日本のメディアは既存メディアが倒産していないにもかかわらず、「メディアがない国」と同じ症状が既に起きている。 これは日本のメディアが、本来の機能を果たしていない証左に他ならない。
プリンストン大学の研究が示したように、メディアが機能しない地域では投票率が下がり、現職の再選率が上がり、政治の腐敗が進む。この現象が、新聞もテレビも存続している日本で既に起きている。つまり日本のメディアは、「あるのにない」のと同じ状態になっている。
大手メディアと政府の癒着の構造を告発し、それでもメディアを機能させる処方箋を提示したのが本書である。孤軍奮闘する独立系ジャーナリスト神保哲生の渾身の書。
目次
まえがき
・失われた三〇年と、変われない日本
・主権者の判断には情報が必要
・メディアが既得権益化すると何が起きるか
・本書の構成と読者へのメッセージ
第1章◆ジャーナリズムがなかった国
・プリンストン論文とカリフォルニア州ベル市の破局
・メディア砂漠とトランプ現象
・メディアが潰れていない日本に同じことが起きているのはなぜか
第2章◆メディア利権は何のためか
・癒着の原風景──新聞社の本社ビルはすべて政府からの払い下げ
・買収による参入も許されない特殊な産業
・世界のメディアが瀕死に喘ぐ中、日本のメディアだけが健在なからくり
・メディアの三大利権+α
第3章◆記者クラブという宿痾
・ライシャワー大使が刺されても情報は記者クラブだけに
・「NHKによると昭和天皇がお亡くなりになったようです」
・そもそも記者クラブとは何か
・起源は第一回帝国議会
・戦時下の情報統制のツールに
・戦後、GHQによる解体要求と記者クラブの存続
・法的根拠は昭和三十三年の大蔵省通達
・八〇〇のクラブ、十六社体制
・政府広報の発表場であり、洗脳の場であり、囲い込みの場でもある
・外国メディア排除と相互主義違反
・なぜ記者会見の参加資格が重要なのか
・外だけでなく内にも閉ざされている
・参入障壁と新規参入の防波堤
・民主党政権で大臣会見が開放されたことの意味
・安倍政権で何が起きたのか
・総理会見がただの茶番劇に成り下がった
・希に質問に当たることはあっても
・一八九〇年の理想と二〇二六年の現実
第4章◆最大のタブーと究極の護送船団
・「再販」というメディア最大のタブー
・自由主義経済の大原則と、その例外としての再販
・独禁法第二十三条第四項の「著作物再販制度」とは何か
・勧誘員のティッシュと洗剤の正体
・戦後、世界の多くの国が再販を採用し、そして撤廃した
・再販で守られた新聞社が手にしたもの
・「持分法投資利益」という地方局出資のもう一つの果実
・再販そのものに罪はない、それが市民に支えられている限り
・市民からの寄付を不動産事業や放送局への出資に使うことが許されるのか
・再販を支えているのは政府
・竹島一彦、再販廃止に正面から挑み破れた公取委員長がいた
・再販制度がメディア最大のタブーになる構造
・テレビが絶対に再販を取り上げない理由
・新聞とテレビの兼営を制限しないマス排原則
・第一の理由 相互批判・相互監視機能の確保
・第二の理由 言論の多様性の確保
・ワシントン・ポストとデトロイト・ニュースの局スワップ
・アメリカのクロスオーナーシップ規制の現在
・政府が直接放送免許を付与する日本は異常
・五つの巨大メディア・コングロマリットができた理由
・最大の被害者は市民
・なぜ新聞だけが軽減税率なのか
・「非課税」よりも「軽減税率」がおいしい理由
・他の公共性分野はどう扱われたか
・国会と党税調での「議論なき決定」
・「欧州並み」言説の歪み
・経済学者の圧倒的多数は軽減税率を支持せず
・「読売新聞最高権力者」の役割
・公共性なら候補はいくらでもある
・四つの利権が重なり合う構造
第5章◆メディア倫理の崩壊
・総理自身の考えはどうでもいいこと
・黒川弘務検事長と記者の賭けマージャンの意味するもの
・AP通信とロイター通信のエシックスコード── 国際水準の倫理基準とは
・AP通信の「ニュース・バリューと原則」
・ロイター通信の「一〇の絶対的原則」
・日本の報道機関は「一から一〇まで」倫理違反
・謝礼、贈答品、出演料 ──「もらって当然」「払って当然」の文化
・飲食・接待、そして夜回り・朝駆け──権力の情報操作の下請けに
・人質司法とメディア──共犯関係の構造
・裁判官・裁判員もまた、報道の影響下にある
・袴田事件、村木事件──繰り返されてきた構造
・なかったことになっているからリークは成り立つ
・根底にあるのは政府とメディアの癒着関係
・盗聴法を「通信傍受法」と呼ばせた法務省と記者クラブの関係
・北方領土取材を禁じる「閣議了解」に従う霞クラブ
・ミニマムアクセスが保障されていないことが問題
・ペンタゴン・ペーパーズ事件に見る「国益」とは何かという問い
・半世紀後のペンタゴンに起きていること
・国連の調査が日本の報道に投げかけた問い
・ケイ報告の三つの勧告
・有り得ないくらい不誠実だった日本政府の反応
・日本の報道の自由度ランキングは先進国中最低
なぜここまで低いのか──RSFが挙げる四つの理由
第6章◆日本が変われない本当の理由
・二百五十年の思想史──ミルトンからハッチンズまで
・理念を制度に埋め込み、そして手放したアメリカ
・日本にメディアの制度設計はあったのか
・戦前のメディア統制思想──鈴木庫三と「教育の国防国家」
・戦後への連続──「逆向きの制度設計」の系譜
・電波監理委員会の設置と廃止
・田中角栄郵政相の三十四社一括予備免許
・原口総務相のクロスオーナーシップ規制強化と挫折
・変革のサイクルが起動しない国──四つの理論
・ジョン・キングダンの「政策の窓」モデル
・マコームズ&ショーのアジェンダ設定機能
・バクラック&バラッツの「権力の二つの顔」
・チョムスキー&ハーマンのプロパガンダ・モデル
・日本における五フィルターの作動
・韓国と台湾はメディアを変えて国を変えた
・だから日本は変われない
・表層と深層──変革を阻む二つの層
あとがき
著者プロフィール
神保哲生