静かに生きて考える  Thinking in Calm Life

静かに生きて考える Thinking in Calm Life

著者 : 森博嗣

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定価 : 1700円(税別)

  • 判型 : 四六
  • 刊行年 : 2024/01/17 発売
  • ISBN : 9784584139943

内容紹介

世の中は騒々しく、人々が浮き足立つ時代になってきた。そんなやかましい時代を、静かに生きるにはどうすればいいのか? 人生を幸せに生きるとはどういうことか?
作家森博嗣が自身の日常を観察し、思考した極上のエッセィ。「書くこと・作ること・生きること」の本質を綴り、不可解な時代を生き抜くための智恵を指南する。
〈無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状況といえるだろう。人間は何故生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものなのだから、辻褄が合っている。〉(第5回「五月が一番夏らしい季節」より)。
他者と競わず戦わず、孤独と自由を楽しむ生き方のヒントに満ちた書です。
第1回 やかましい世の中でも静かに生きたい
静かな日常の具体例
いつの間にかやかましい世の中になった
矛盾を抱えて生きる

第2回 一人で楽しんでいることいろいろ
ドライブが好き
読書は趣味というよりは日常
ゲームはしなくなった
仕事をきかれたら「無職です」と答える

第3回 もう充分に生きただろう
今はロスタイムだと認識している
欲しいものはもうほとんどない
ガラクタに囲まれて暮らしている
犬が家族

第4回 のどかさにかまけて
忙しさの本質について
仕事って、本当に忙しいのか?
自由というのは、本質的に忙しいものだ

第5回 五月が一番夏らしい季節
常夏の国というのは何が良い?
生きていることが無駄である
誰とも戦わない贅沢

第6回 思いどおりになる楽しさ
毎日、楽しいことばかりで大変
予測が当たる楽しさ
小さな喜びを感じるためには?
無邪気ではないから美しい?

第7回 単なる移動による幻想
スキャナとプリンタを買った
部屋の整理をする理由
整理をしても価値の増減はない

第8回 インプット過多の社会
漫画だって読みますよ
アウトプットをさせない現代
なにもかもがキットやパックになった

第9回 こんなふうに生きようと考えたことはない
影響を受けたものを語りたがる人たち
現在抱えている問題を語る人は少ない
この人の生き方に感銘を受けた、という経験はない

第10回 ジェネラルからスペシャルへのシフト
ジェネラルなものが衰退する?
みんなと同じが良いという価値観
これからのコミュニケーション
蛇足

第11回 どうでも良い話をしなくては
何色が好きか問題
綺麗とか美しいとか意識とかも
どうでも良い人間だから

第12回 とにかく頭を下げる文化について
あなたを責めているのではない
謝ることが問題解決だという勘違い
機嫌を取ることだけに神経をすり減らす人たち

第13回 マスクとワクチンはどちらでも良い
マスク問題はどちらでも良い
ワクチン問題もどちらでも良い
大勢に訴えようとする理由は?
人に会わない、人と直接話をしない

第14回 中古品と仕掛け品の人生
材料と部品を工面し工夫する
ジャンクに目を輝かせる少年
ネットオークションでジャンクを買う
仕掛け品の魅力

第15回 完成したとき味わえるものとは
作ったものが「完成」するのはいつ?
考え抜けば、作らなくても完成?
完成とは幻滅を伴うもの
みんな、何を作っているのだろう?

第16回 思い出って、作るものなの?
「思い出」って何かな、と思い出してみる
アリバイを買う人たち
ドイツの街を夜歩いた思い出
しっかりと思い出せなくても良い

第17回 言葉を覚えて知ったつもりになる。
固有名詞を記憶できない人
言葉で記憶すること
フォーカスを合わせない捉え方
道はどこまでも続いている

第18回 「人間が描けている」という幻想。
デビュー作は散々だった
文学というのは何を描くのか?
祭や儀式が普通の状況ではない
儀式はマニアックになりがち

第19回 「科学的に確かめられた」とは?
医者に「死にますよ」といわれたら?
薬を飲んだら治った、だけで効く薬といえるか?
科学的な検証には三つの方法がある
判断の基準となる証拠とは
人の意見、人の経験は、自分に当てはまるか?

第20回 褒めるか、叱るか、それが問題なの?
褒めても叱っても、人は育つ
世の中を褒める方法
褒めるか叱るかで、人はどう変わる?
褒めるも叱るも期待ゆえのこと

第21回 時流に逆らってクルマ談義でも
大人のクルマ離れ
ドライブと整備が趣味
今は乗りたいクルマがない?
自動車は、何が「自動」なのか

第22回 メリハリのないシンプルな生き方
年末年始は何をしていたのか
休日も祝祭日もまったく同じ生活
メリハリのない生活を心がけている
いたってシンプルな生活

第23回 知るとは、知らないを増やすこと
子供が楽しそうなのは何故か?
人や社会から離れて静かに暮らしていると……
大人になることで失うものとは?
知らないから楽しい

第24回 「確率」で未来を評価すること
神様よりは信頼できる気がする
宝くじの不思議な確率
確率が低くなるほどリターンが大きい
保険も小説も確率で認識

第25回 書くこと作ること生きること
新作を書きました
ついでに近況と今後の予定
作ることと生きることは同じ
ものを作ることは孤独を楽しむ時間

第26回 働くことは「偉い」のか?
日本人に特有の二つの価値観
働く人が偉いというのは経済社会だから?
支配されたら、支配したくなる
それでも戦争は続いている

第27回 考えない人間は葦である
オートマティックトランスミッション
「野生」を失った人々
自由のために考える
ようやく少し春めいてきたか

第28回 どんなものも元どおりには戻らない
一時的なものか、恒久的なものか?
歴史は繰り返さない
繰り返される騙し合い
いろいろ作っているが、相変わらずである

第29回 暇だから「観察日記」みたいに書こう
どうして選挙に行かない人が多いのか?
どうして子供が減ってしまったのか?
この際だから、やめた方が良いものを書いておこう
春なので、ガーデニングに忙しい毎日

第30回 ものを作るときに考えること
庭園鉄道の信号機システム
何を使って作るか、どう作るのか?
作ることに興味がなくても、なにか作っている
映像で考え、映像を残す

第31回 「頑張って」はいわない方が良い?
「頑張ってね」と気安くいえる人たち
「頑張るな」というアドバイス
「頑張る」の反対は、「余裕をもって」
暖かくなってきたので庭園鉄道の工事開始

第32回 「視点」と「着眼」から生まれる「発想」
「頭が良い」とはどういう意味か?
「発想」とはどういう行為か?
「視点」を多く持つこと
一カ月かかった工事が終了

第33回 現代人の過剰な他者依存
自覚のない他者依存
他者依存の欠点は何か?
若者ほど他者依存性が強い
いる他人依存の人ばかりの社会である。
ロングドライブのシーズン

第34回 若者はみんな「時間持ち」
お金持ちか、時間持ちか
お金も時間もタダではない
時間によって生み出されるもの
草を刈って、犬のシャンプーをした

第35回 言葉は言葉どおりではない
知りたいから尋ねているだけなのに
気持ちを察することが常識だとしても
アドバイスをすると非難に受け取られる
屋外活動で肉体労働が増えている

第36回 期待どおりなんて、期待していない
テレビのレポータほど無駄なものはない
うんうんと頷きたいだけの視聴者か
思い知らせてやりたい症候群
短い夏もそろそろ終わり?

第37回 「気持ち」って何?
感覚、感情、意見、意思?
「気持ちがわかる」とはどういう意味?
「気持ちが良い」ならわかる
一人でいるときが一番面白い

第38回 簡単な方法に縋って失敗する
簡単な方法ほど効果がない
「方法」があると信じてしまう
簡単にできることへの逃避
面倒なことがあるほど楽しめる

第39回 そんなことできるわけない症候群
「できる方法」しか聞き入れない
「変わるのは嫌だ」という固さ
「自分はこういうものだ」との思い込み
短い夏の次は、重労働の秋

第40回 理想の死に方
死に方は選べないという問題
理想的な死に方とは
死を語ることを忌み嫌う文化
虚しさと楽しさを同時に味わおう

著者プロフィール

森博嗣

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。